Topics from the Museums in the World (世界のミュージアム)
KW - INSTITUTE FOR CONTEMPORARY ART テリトリーズ展



 ベルリン、オーガスト通りと聞けばそこは、ミッテ区のギャラリー街であることがピンとくる。そのオーガスト通りの中心的存在であるのは、KW(カーヴェ)ことKunst Werke (クンスト ヴェルヶ)。ニューヨークのPS1と姉妹施設であり、コンテンポラリー作品展を数多く仕掛ける場所である。ここは見かけとちがって商業的なギャラリーでも国立や州立の美術館の類でもない。宝くじ基金を主な財源とする施設として、しがらみがなく、現代の表現をプレゼンテーションしている。その分、オーガナイザーの政治的、社会的な意見を含む展示も多いのも特徴だ。

 この夏の特別展は、テリトリーズ(占領地)というタイトルの展覧会であった。展示内容は、現在のイスラエルについて。作家は、アーティストに限らず、建築家やデザイナーも含まれており、各々の作品は、膨大な資料と調査から成り立つものである。ある作品は、商業的な建物でさえもイスラエルがいかにパレスチナを防ぐ建築を推進し、建造してきたかを暴くものであった。またある作品は、国境の何気ない殺風景な丘を撮影し大きくしたもので、写真の前に案内板を立てそれにどこに監視塔があり、シェルターがあるか展望できるようになっていた。テリトリーズという命名もなにかイスラエルの建国にまつわる意味からきているようなものである。

 この展示の別イベントとして近くの聖エリザベス教会にてアカデミックな法律家、建築家など専門家をディスカッションさせる催しも行われ、またやはり近所の聖ヨハネス・エリザベス教会では、イスラエルの記録映画、ビデオインスタレーションが設置されていた。こういった教会は、東ドイツ時代に放置されていた教会であり、今では宗教的な機能をもたず、ただただ空間だけがのこっているのである。最近ではその聖なる雰囲気を保つ建物を文化的な催しにつかおうとする動きが盛んである。

 このような付属的施設をも利用し、規模を広めたKWではあるが、教会を使うことによってさらにこの展示の意味は深まる。キリスト教会の中にイスラエルの問題を提示することは、歴史と現在、ヨーロッパ人とユダヤ人を同じ舞台に立たせる役割を果たす。これは俊敏でシビアな現代性を捕らえた結果であり、KWの企画はアートとしてできること総べて挑戦してしまうような意気込みさえ感じる。KWはこれからもベルリンの現代アートの中心として注目と期待を集める場である。


ヨハネス教会にての展示風景。
Kunst Werk外観。
ダム・グラハムの作品&カフェの置かれる中庭。


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